頭のいぼ

わたしの頭にはイボがある。

正式には、ほくろらしい。

しかし、そのほくろは黒くなく、肌の色。

 

小さい頃からそのイボ(あえてここではイボと呼ばせてもらう)は

あった。

位置は頭のてっぺん。

大人になった今もなくなることもなく、存在しているが、

自分では見ることができない。

時々髪からのぞいているらしい。

 

実は父も同じようにある。

彼のは柔らかく、しぼんだ小さい梅干しの感じだが、

後頭部の真ん中より少し下にある。

刈り上げの頭からよく見えていた。

 

つまり遺伝だろう。

 

中学の時、兄が私に言った。

二十歳になったとき、それを押すと宇宙人に戻るのだと。

冗談だとわかっていたが、

二十歳になった夜、そっと押してみた。

なにも変わらなかった。ホッとした。

そのことを兄に報告すると、言った本人は忘れていた。

 

30歳ぐらいの時、少し大きくなったイボを皮膚科で診てもらったことが

ある。

その時、イボではなく、ほくろだと知った。

手術で取れないか、聞いてみた。

ほくろだから、根が深いし、位置が頭だからね。危ないよ。

取れたとしてもその周辺は毛がなくなるし、

もう生えないからやめておいたほうがいい。と言われた。

しょうがなく取るのを諦めた。

 

最近、髪を肩まで切り、パーマをかけたら、そのイボが

自己主張するようになった。

髪の間からぬっと顔をだしているのだ。

黒い髪に白っぽいイボ。やけに目立つ。

 

それを知ったのは最近、娘が座り込んでいる私を

頭の上から写真を撮ったからだ。

撮った写真がLINEで送られてきた。

コメントもなしに。

まるで気づけよと言わんばかりに。

 

すごく恥ずかしかった。

こんなに大きくなって目立っていたなんて。

いままで誰も言ってくれなかった。

 

その日からイボを隠すようにサイドの髪を頭のてっぺんでくくるように

なった。

 

中学の頃、同級生に鼻の一番高い位置にイボがある子がいた。

その子のイボは黒かった。

もしかしたら、その子のイボもほくろだったのかもしれない。

その子はよく男の子たちから「鼻くそがついているぞ」と

からかわれていた。

そのことと比べたら、私は良いほうだと思った。

隠すことができるのだから。

 

しかし、最近考え方が変わった。

頭のてっぺんにイボがあるのが私なのだと。

他の人との違いなんだと。

 

父からもらった遺伝というプレゼントだと。

父と私が親子だという証拠。

 

先日、息子の頭にないか探してみたがなかった。